清水洋『イノベーションの考え方』は、ひらめき神話を壊し、価値の再定義から始める実践的な思考法を示す一冊。
技術より「需要をどう創るか」、単発より「仕組みで広げるか」を軸に、補完財・制度・組織を束ねて市場を設計する視点が光る。歴史的事例を手掛かりに、探索と活用を往復し、小さな実験で学び、失敗を資産化する。顧客の不満・未充足の仕事を掘り起こし、異分野の知を再結合して、新しい当たり前を生む道筋を描く。
読み終える頃、あなたの次の一歩が具体化している。また、発明と商業化の間に横たわる“死の谷”を越えるには、標準化・流通・資金・法規制といった補完要素の同時設計が不可欠だと説く。
リーダーは壮大なビジョンより、仮説→検証→拡張のリズムを回し、指標は投入ではなく価値の移動で測れという。
偶然を呼び込む出会いの設計、外部の知を巻き込む契約とガバナンス、両利きの組織づくりまで、実務に効く指針で背を強く押す知の地図。