「付加価値のつくりかた」は、大手に埋もれがちな個人や中小企業でも“高くても選ばれる存在”になれる具体策を示す一冊だ。白石達也は付加価値を「顧客が進んで払う上乗せ分」と定義し、その源泉を①機能的価値②情緒的価値③物語的価値の三層で整理。
機能は模倣されやすいが、情緒は体験設計、物語は理念と歴史で差別化できると説く。実践面では、顧客の「不」と「なぜ」を掘り起こす観察法から始まり、独自ストーリーで期待値を書き換え、価格決定権を握る「価値の言語化」へと至る7ステップを提示。
「狭く深く」を合言葉に市場を極限まで細分化し、一人の熱狂的支持者を生むことで雪だるま式の口コミを狙う。制作過程をSNSで共有し共創関係を築く「裏側公開マーケティング」、希少性を演出する「発売日二段ロケット」など即転用できる施策も豊富だ。
具体例として、地方の豆腐店が大豆生産者の物語を週替わりで発信し“一丁300円”でも売り切れ続出、売上5倍を達成したケースを紹介。理論と数字を往復しながら、読者の商品を顧客の人生を変える「物語のパーツ」へ昇華させる道を描く。値下げの恐怖から解放し、「技術より問いと思考」で付加価値は生み出せる――それこそが本書の核心である。